言語学上の違い
IT=Information Technology(情報技術)の略です。ITという言葉とデジタルという言葉、何が違うんだ?と問われて答えに窮したことはありませんか。そもそも、横に並べて比較してよいのか迷う場合もあります。
デジタルは元来「アナログに対する概念」として使われ、特定の和訳は定まっていません。デジタルに「テクノロジー」を付けて「デジタルテクノロジー」あるいは「デジタル技術」と呼ぶことがあります。ITとデジタルテクノロジーを比較すると、言語学上は大きな意味の違いは感じられませんが、用語の背景と運用方法に差があります。
使い方上の違いと進化
ITは手段、デジタルは目的
しかし、2つの言葉何か使い分けられているような気がしませんか。会社の組織でIT部門は以前からあるけど、デジタル部門は最近できたという会社もあるのではないでしょうか。また、部署名そのものがITからデジタルに変わったという場合もあるかもしれません。
デジタルという用語はアナログとの対比で以前から使われている言葉であるにも関わらず、ここ10年くらいで使われる場面がどんどん増えて、しかも進化しているように感じます。
つまり、ITとデジタルという言語として意味合いには大きな違いはないのですが、実際の現代社会における使い方に違いが生じていると言えます。
現代社会においては、ITはコンピューターを活用して何かしらのシステムを構築したり運用したりする技術全般を指すのに対して、デジタルはシステム利用者や利用者の体験価値や戦略に関連して使われています。ITが作り手目線で使われているのに対して、デジタルは使い手に近いレイヤーで使われています。言い方を変えれば、ITは手段として捉えられているのに対して、デジタルは目的に近いレイヤーで使われています。

デジタル=利用者目線に近いイメージ
目的に応じた用語整理の重要性
このような「デジタル」という言葉の使い方を誰が始めたのかはよくわかっていません。しかし、ITが管理するためのシステムに使われるのに対して、デジタルは価値創造のために使われるイメージがあります。従来のIT部門がウォーターフォール型に開発をするのに対して、最新のデジタル部門はアジャイルにサービスを構築します。このように、組織文化やガバナンスなど実態として使い分けたほうが、納得性が高い場合に、ITとデジタルという言葉を使い分けるとわかりやすいかと思います。
ただこのような用語の使い分けは、個人個人の認識により異なる場合があります。組織の中で利用する場合は、その意味合いや定義について、一度整理した上で、使い分けることが重要かと思います。
執筆者:デジタルトランスフォーメーション研究所 代表取締役 DXエバンジェリスト 荒瀬光宏|荒瀬光宏 プロフィール
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